どうして婚活は上手くいかないのか?

多様化する婚活、その実態は?

マッチングアプリ、婚活パーティー、結婚相談所など、現代の婚活は多様な方法が存在します。周りを見渡せば、これらのサービスを利用した経験を持つ人、または利用中の人がいるかもしれません。しかし、時間とお金を投資した結果、誰もが理想のパートナーと巡り会えているのでしょうか?

データが示す厳しい現実、成婚率はわずか数パーセント

もし、あなたがまだ理想の相手を見つけられていないなら、婚活の成功率について知っておく必要があるかもしれません。2006年に経済産業省が行った「少子化時代の結婚関連産業の在り方に関する調査研究報告書」によると、結婚相談所の成婚率はわずか8%程度という結果が出ています。さらに、小規模な結婚相談所では3%程度という情報もあります。

近年、自治体による結婚支援も積極的に行われるようになりました。例えば、埼玉県の結婚支援サービス「恋たま」では、2024年6月末時点で20,096人が登録、33,607組がお見合い、12,955組が交際、そして成婚退会は482組という実績です。

これらの数字から見えてくるのは、結婚相談所を利用しても、9割以上の人が結婚に至っていないという厳しい現実です。

マッチングアプリの落とし穴、「マッチング」と「交際」のギャップ

一方、手軽さが魅力のマッチングアプリでは、毎日のように「マッチング成立!」という言葉が飛び交っています。しかし、ここで言う「マッチング」は、単に「いいね!」と「ありがとう!」がお互いに成立しただけの状態に過ぎません。実際に交際やデートに繋がるかどうかは、全く別の話です。マッチングアプリは出会いの「きっかけ」を作る場としては有効ですが、成婚までを考えると、乗り越えるべきハードルが数多く存在すると言えるでしょう。

婚活がうまくいかない理由

婚活の成功率が低い理由には、「条件やスペックによる出会い」「自己認識の不足」「受け身の姿勢」の3つが挙げられます。

条件やスペックによる出会いの落とし穴

結婚相談所やマッチングアプリは、条件やスペックで相手を選ぶ仕組みが基本です。例えば、理想のパートナーに次のような条件を挙げるでしょう。

  • 年収:600万円以上
  • 年齢:20代後半まで
  • 身長:175cm以上
  • 学歴:GMARCH以上の大学卒業
  • 体型:普通または細マッチョ
  • 職業:公務員や大手企業など安定した仕事

もし条件を指定せず、すべての登録者を見ていこうとすると、数千~数万人の中から自分に合う相手を探さなければなりません。婚活パーティーでも数十人の中から一人ずつ吟味することになり、時間がいくらあっても足りません。そのため、多くの人が最初に条件やスペックで相手を絞り込むことが一般的です。

しかし、希望する条件と実際の社会状況にギャップがある場合が多いです。例えば、25~29歳の平均年収は389万円。30代でも450万円前後です。希望する年収600万円以上の男性は少数派であり、さらに年齢や職業の条件を加えると該当者はさらに限られます。

25~29歳の平均年収は389万円
30~34歳の平均年収は425万円
35~39歳の平均年収は462万円
【データ出典】国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」より

婚活サービス上には普段の生活では出会えないような「高スペック」な人々が登録されています。そのため求める条件が自然と高くなっていくことで、該当する人は限られてきます。結果的に出会いの機会を狭めてしまい、本当に相性の良い相手を見逃してしまう可能性があります。

また、たとえ条件を満たしていたとしても、価値観や性格、趣味、人生観などの内面的な相性が合わなければ、長期的に良好な関係を築くのは難しいでしょう。条件はあくまで表面的な要素に過ぎず、内面的な相性を見極めるには、実際に会ってコミュニケーションを取る必要があります。

条件で相手を絞り込むと、無意識のうちに「あれもダメ、これもダメ」と相手の欠点ばかりに目が行きがちです。これは相手の良いところを見つける機会を奪い、関係が発展する可能性を閉ざしてしまいます。さらに、表面的な情報だけで「あり」「なし」を判断する行為は、機械的な作業になりがちです。その結果、人間味や温かみを失ってしまうことにもつながります。

前述の通り、婚活サービスでは条件やスペックによる出会いが最初の入り口となっています。しかし、ここで注目すべきは、国立社会保障・人口問題研究所が2021年に行った「第16回出生動向基本調査」の結果です。この調査によると、男女ともに結婚相手に最も重視する条件は「人柄」であり、次いで「家事・育児の能力や姿勢」「仕事への理解と協力」が上位にランクインしています。

●女性が結婚相手に求める条件
第1位 人柄…98.0%
第2位 家事・育児の能力や姿勢…96.5%
第3位 仕事への理解と協力…93.4%
第4位 経済力…91.6%
第5位 容姿…81.3%
第6位 職業…80.7%
第7位 共通の趣味…72.2%
第8位 学歴…51.7%
●男性が結婚相手に求める条件
第1位 人柄…95.0%
第2位 家事・育児の能力や姿勢…91.5%
第3位 仕事への理解と協力…88.5%
第4位 容姿…81.2%
第5位 共通の趣味…73.2%
第6位 経済力…48.2%
第7位 職業…46.6%
第8位 学歴…27.3%
【データ出典】国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より

男女共通: 「人柄」が圧倒的に重視されている。
女性: 「家事・育児の能力や姿勢」「仕事への理解と協力」が上位。経済力や容姿、職業よりも内面的な要素が重視されている。
男性: 女性と同様に「家事・育児の能力や姿勢」「仕事への理解と協力」が上位。容姿は経済力や職業よりも重視されているが、やはり内面的な要素への期待が大きい。

多くの人が結婚相手に求めているのは、年収や学歴といった表面的なスペックではなく、人柄や価値観といった内面的な要素であるということです。これは、1992年の調査開始以来、一貫した傾向です。にもかかわらず、婚活の現場では条件やスペックによる出会いが主流となっているため、理想と現実の間に大きなギャップが生じています。このギャップこそが、婚活がうまくいかない大きな理由の一つと言えるでしょう。

自己認識の不足とその重要性

婚活において、多くの人が結婚相手に求める条件として「人柄や価値観が大事」と口にします。しかし、「具体的にどんな価値観が大事か?」と問われると、答えに詰まる人も少なくありません。例えば、「やさしい人」とは、どのような行動を指すのでしょうか?

  • 電車で席を譲る人?
  • 荷物を代わりに持ってくれる人?
  • 相手の話を親身になって聞いてくれる人?

このように、一見シンプルな言葉でも、その解釈は人それぞれです。価値観を共有できる相手とは、長期的に良好な関係を築きやすいと言われますが、まず自分自身が「どんな価値観を重視しているのか」を明確にすることが欠かせません。

もし自分がどのような価値観を持ち、それをどう生かしたいのかが分からないままだと、相手を選ぶ基準も曖昧になりがちです。たとえば、「笑顔が素敵な人がいい」という条件が浮かんだとしても、それがなぜ重要なのかを深く掘り下げて考えることはあるでしょうか?

その笑顔が「安心感を与えてくれるから」なのか、「家族を明るくしてくれそうだから」なのか、理由が異なれば価値観の本質も異なります。また、自分自身が何を大切にしているのかを理解しないまま婚活を進めると、条件を満たしている相手であっても、価値観の違いから関係が続かなくなる可能性があります。

婚活において理想のパートナーシップを築くためには、まず「自分自身を知る」ことが必要不可欠です。自己認識を深めることで、自分が本当に求めているものが明確になり、表面的な条件にとらわれることなく、本質的な繋がりを築くことができます。

受け身の姿勢が生むリスクとその影響

主体性を欠く姿勢が生む問題は、婚活だけに限りません。職場や学校など、どの場面でも「受け身の姿勢」の影響は顕著です。その特徴を振り返ることで、この姿勢がもたらすリスクを具体的に理解してみましょう。

  • 低い自己肯定感とマイナス思考:自信のなさは、行動力を奪います。チャレンジや成功体験が少ないため、自己肯定感が低くなり、マイナス思考に陥りがちです。「どうせ無理だ」「きっとうまくいかない」という先入観が、行動を起こす前から可能性を閉ざしてしまいます。この思考習慣が続くと、自ら機会を逃してしまうだけでなく、相手からも頼りなさを感じられる結果を招きます。
  • 曖昧な意思決定力:「どっちでもいい」「何でもいい」という発言を繰り返していると、意思がない人だと見なされる可能性があります。こうした態度は、特に婚活では大きなリスクです。相手から「頼りない」「自分ばかり負担している」と思われる原因となり、進展が望めない関係に陥りがちです。
  • 周囲の目を気にしすぎる態度:他人の評価を恐れるあまり、発言や行動に消極的になるのも受け身の姿勢の特徴です。「自分をさらけ出したらどう思われるのだろう」「批判されたくない」と不安になる気持ちは理解できますが、これを乗り越えなければ、本来の自分を相手に伝えることはできません。この不安は、結果的に相手との距離を広げてしまう可能性があります。
  • 低いモチベーションが引き起こす問題:主体性がない人は、目標に向けた努力や達成感を味わう経験が少ないため、行動にモチベーションが伴いません。そのため、婚活の場面でも「頑張ろう」という姿勢を相手に見せることが難しくなり、関係の進展に必要な信頼を得られないことがあります。

婚活における受け身の姿勢の影響

婚活では、受け身でいることで以下のような印象を相手に与えてしまう可能性があります。

  • 自分に好意があるのかわからない:相手が自分への興味や熱意を感じられないと、関係の発展は難しくなります。特別に好かれている訳ではないから変に関係性を深めることを避けられてしまいます。
  • 自分だけが頑張っていて疲れる:デートプランやお店選び、日常会話も自分だけが話をしているような、一方的な努力を感じると、相手はバランスの取れない関係に不満を抱くことがあります。
  • 相手の反応が悪くて良いイメージがない:消極的な態度は、初対面の印象を悪くし、進展のチャンスを逃す原因になります。

これらの要因が重なると、せっかくのご縁が途中で終わってしまうことも珍しくありません。

哲学対話で解決する婚活の課題

婚活がうまくいかない理由として、多くの人が次の3つに直面しています。「条件やスペックによる出会い」「自己認識の不足」「受け身の姿勢」によって、本質的な繋がりを築けない状態を示しています。

一方、哲学対話の本来の目的は、深く考え、自己理解を深めることや他者と本質的な対話を通じて相互理解を育むことにあります。つまり、自分を見つめ直し、主体性を高めるという点で、哲学対話は婚活における根本的な課題解決に寄与する手法といえるのです。

哲学対話を婚活に取り入れる試みは、条件やスペックだけに頼らず相手との対話を通じて価値観や内面的なつながりを深めることに重きを置いています。

たとえば:

  • 表面的な条件を一旦置いておき、価値観や人生観についての対話を重ねる。
  • 「なぜそれを求めるのか?」という問いを自分に投げかけることで、自己認識を深める。
  • 対話の中で自分の魅力や相手の魅力に気づき、それを共有する。

これにより、婚活にありがちな「条件だけを重視する関係」から脱却し、相手と本質的なつながりを築く可能性が広がります。

哲学対話は、自分を知り、相手と本質的な対話を通じて繋がるという婚活の新たな視点を提供します。単に条件を満たすかどうかではなく、「自分が何を求め、相手に何を与えられるか」を見つける旅をサポートするのです。

具体的な内容や方法の詳細については、別の記事で詳しく解説しています。

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