哲学対話のやり方

参加者から主催者へ

哲学対話をやりたいけど、イベントは都市部ばかりだし、近くにイベントがあっても、休日に開催されていたり、月に1度あるかないかということが多々あります。
一番確実に哲学対話を実践する方法は自分で主催することです。
参加者から主催者側に変わるのは、確かに手間が増えるでしょう。
しかし、哲学対話を行うのは他のことを主催するよりずっと簡単です。
ご自身の
職場やコミュニティなどにて哲学対話を実践する上で、最低限で一番簡単な方法をご紹介します。

【イベント実施前】
1)会場を押さえる
2)人を集める
【イベント当日】
3)対話のルールを説明
4)問いやテーマの決定
5)対話をする

1)会場を押さえる
まずは哲学対話を実施する会場や場所を確保しましょう。
レンタルスペースやレンタル会議室は数千円かかり金額が高め。その代わり来場者から参加費用を設定することが可能です。また、おしゃれな部屋やきれいな部屋が多いのが特徴です。
公民館などの公共施設は、金額が数百円と金額が安い。しかし、営利目的の使用が不可な所が多く、参加費用の設定が行えない場合があります。
公園などのオープンスペースは無料で使えます。ただ、気温や天気などの影響があるため、冬や真夏、降雨の時に使えないデメリットがあるためおすすめしません。
同様に、カフェでの開催もおすすめしません。その理由は、哲学対話は椅子のみを使い、テーブルは使いません。なので飲食店にてテーブルをどかすことは、ほぼ不可能ですしお店に対しても迷惑をかけることになります。
職場などの会議室が使えるのであれば許可をもらって使うのも方法です。
なので、参加者から参加費を徴収しないなら公共施設、参加費が発生するならレンタルするのが良いです。
会場の広さは16人前後が座れる大きさが良いと思います。哲学対話をする際には15人前後が1グループとして最適な人数なので、みんなで一緒にやるのであればこの規模の広さがあれば足ります。
参加者の規模とファシリテーターの人数によって調整ください。

2)人を集める
参加者が決まっているのであれば、日程と場所を周知してください。
一般から人を募る場合は、イベント告知サイトやSNSの掲示板に告知を行います。
参加予定者の人数管理をする必要もあるので、イベント告知サイトでチケットを用意すると人数の管理が楽になるからおすすめです。

3)対話のルールを説明
ルールにもとづいて話す。ルールは哲学対話で一番大切な部分になります。
主催者によってルールか微妙に違っていますが、基本的な部分は同じであり、みな同一の方向性を向いています。
ルールの詳細や意味を説明しようとすると、これだけでも膨大になってしまいます。なので、はじめのうちはあまり意識せずに、他で使われているルールを転用すればいいでしょう。
基本的な対話のルールと、武が使っているルールの2種類をご紹介します。
ルールを読み上げて参加者に順守してもらえるように伝えてください。

『哲学対話のルール』

①何を言ってもいい。
②人の言うことに対して否定的な態度をとらない。
③発言せず、ただ聞いているだけでもいい。
④お互いに問いかけるようにする。
⑤知識でなく、自分の経験にそくして話す。
⑥話がまとまらなくてもいい。
⑦意見が変わってもいい。
⑧分からなくなってもいい。

梶谷真司 著 「考えるとはどういうことか: 0歳から100歳までの哲学入門」より抜粋

『対話のルール』

①自分の体験談や価値観を伝えよう

②どんな意見でも受け止めよう

③お互いに問いかけるように意識しよう

④話がまとまらなくても、意見が変わってもよい

⑤発言せずに聞いているだけでもよい

⑥プライベートな内容は守ろう

武が通常使用しているルールより

4)問いやテーマの決定
イベント告知時に話をするテーマが決まっている場合はそのテーマで対話をしてください。
もし、テーマが決まっていなくても大丈夫。参加者からテーマを募って話す内容を決めます。
私は事前にテーマを決めることはなく、毎回、当日に集まった人からテーマを出してもらい対話をしています。
テーマはできる限り「問い」や「質問」形式で出してもらいます。ホワイトボードなどあるなら上がるだけ書き出します。最低限5個以上は出してもらえるようにしましょう。真面目な問いである必要はありません。主催者はできる限りくだらない問いの例を出すと、参加者は答えやすくなります。
ホワイトボードがない場合は、A4の白い紙と水性ペンを用意し、参加者それぞれに1つ書いてもらい読み上げてもらうのも良いです。
複数上がった問いの中から、多数決で投票してもらい、一番多かった問いやテーマで対話をします。
投票結果が同数の時には、決選投票を再度行うなり、ひとつに限定します。

5)対話をする
時間の限りテーマとルールにそって対話をします。
ファシリテーターや主催者はルールから脱線した人を注意することだけを意識すればいいです。
否定的な話をする人がいたら、否定的な話はやめましょう!
本に書いてあることばかり言う人がいたら、ご自身はどんな風なお考えですか?
というような感じでルールを守るように方向修正します。
ルールが順守されていれば、テーマから脱線してもいいし、どんな内容の話をしてもらっても構いません。
哲学対話の流派によって、内容を取りまとめたり、集中して掘り下げたりしますが、私は特段なにもしないタイプのファシリテーションをします。
こういうやり方でなくちゃいけないことはありませんので、ルールを守っていさえすれば、あとは特に気にしなくていいです。

哲学対話は実践あるのみです。
知識やスキルがなくても構いません。まずは気軽にやってみる。その繰り返しによって上達していきます。


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南相木おしゃべりコミュニティ

長野県南相木村
県の東に位置する人口1000人の集落
2018年12月3日に「南相木おしゃべりコミュニティ」というイベントを開催してきた。

東京大学の梶谷先生を村に招いてのイベント。場違いな組み合わせである。
ありがたい講義でもするのかと思いきやそうではない。おしゃべりをするらしい。そして、お漬物を持参してご飯を食べるイベントのようだ。
不可解すぎる。
村民たちはおしゃべりをしないのか?
お漬物にどんな関係があるのか?
しかし、これらはすべてが繋がり、社会問題解決、地方創生に至るかもしれない壮大な取り組みなのである。

きっかけは、大人になった子ども達が村に帰ってこない問題が始まった。
地方ではよくある話である。進学するたびに村から離れ都会の学校に進む。そして卒業しても都会で就職し村に帰らない。都市部に人口が集中し、田舎は過疎化していく。そして、限界集落があちらこちらに誕生し、2040年には全国1800市区町村の半分が消滅する予測もある。
南相木村もこのままでは村は消滅するだろう。村にとっては一大事。深刻な死活問題を抱えている。
どうすれば、子ども達が村に帰ってくるのか?また、どうすれば、南相木村に移住してくれるのか?
その問題解決のためにこのプロジェクトはスタートしました。
南相木村の良さや魅力を発掘するのがプロジェクトの命題なのだが、その問題を解決するのは外部に居る私達ではない。
答えは村民達が持っており、村で解決しなくてはいけないことである。
もちろん村には議会が存在しており、様々な決定を下している。けれど、村のことは議員が代表して決めるより、住民の多くが関わって決める方が良いに越したことはない。
しかし、住民がいきなり議論に参加するにはハードルが高い。なぜならば、会議や議論という場では思ったことを自由に話せる場所ではない。そして、お互い知り合った仲であるとはいえ、相手の価値観や大切にしていることなど内面に関して深く知らない。
それで議論しても、立場が上の人か、知識を多く持っている人、声の大きい人の意見に集約してしまい、多様な議論はしにくいのです。
良い話し合いができるようにするには、まずお互いの関係性を作ることがまず必要になる。
お互いの関係性を作るためにおしゃべりをしたり、一緒にご飯を食べるイベントからはじめました。
おしゃべりといっても普段のおしゃべりをする訳ではない。哲学対話という手法を使って、なんでも自由に、そして真面目に話し合うことをします。
対話のルールによって相手のことを深く理解することができ、自然と良い関係が作れるようになります。
そして、ごはんを一緒に食べることは心理学的にもお互いの距離を縮めて親しくなりやすいとされています。

対話では、まず南相木村の好きな所について話が上がった。
「秋の紅葉がきれい。」
「カラマツなど新緑が芽吹くころの鮮やかさが素敵。」
「御座山登山。360度さえぎるもののない景色が良い。今は年取ってもう登れないがまた登りたいと思っている。」
「朝日の後光が美しい。」
「松茸が収穫できる。」
「住民の人柄がいい。誰とでも親しくすることができる。」
「立岩が大黒様に見える。」
「立岩が女性の姿に見えた。」
「立岩をパワースポットにできると思う。」
住民の方それぞれに思入れをお持ちになっていました。
さっと対話をしただけで南相木村の魅力が洗い出せました。
逆に、「村には仕事がない」「奨学金制度が認知されていない」というような問題点も認識することができた。
また、対話だからこそ自己開示がしやすいという側面もあります。
ずっと黙っていた村長が最後にご自身の話をされました。
大人になっても村から離れずに行政にかかわる仕事をしようと思ったきっかけがあったそうです。
「高齢者が病院に向かう途中にぬかるんだ道があったそうです。歩いては渡れず、若き日の村長が担いで運んだそうです。そのことを大変感謝されて、翌日の朝4時にお礼の電話をもらい、その翌日も朝4時に電話をもらって、明け方というのはえらい迷惑だったそうです。でも人から感謝されることに喜びを見出し、行政の仕事に携わり、今では村長までになりました。」
とても距離が縮まるエピソードです。俺はこんなことができる。こういうすごいことをしてきた。という話しではなく、自分の経験談を話すことによって相手への理解が深まります。
私が村の住民だったら、村長に1票入れるでしょう。人と感謝をし合える村づくりをしてくれそうだと期待できるからです。
一見、遠回りのように見える対話をすることによって、ブレインストーミングのような魅力の洗い出しに、相手のことを知る相互理解を構築することにつながる。
哲学対話の効果が現れたと思います。
そして、みんなでごはんを食べる。白いごはんと豚汁、そしてお漬物です。
漬物ですが、作るご家庭によって味が違う。よその漬物を食べる機会がありそうでないので漬物によってコミュニケーションにつながる。
食べて新しい発見もあり、野沢菜漬けがシャキシャキしている。大根の巻漬けとかピーナッツとか知らなかった漬物がある。高級料亭に出しても引けを取らない、3000~4000円するような盛り合わせが振舞われていました。

村の人にとっては当たり前となっている漬物、食べきれない時は捨ててしまうようなものが、他の人にとっては魅力として受け止められます。
この漬物を売り出すのもよいかもしれません。
第一回目の哲学対話としては大成功といえるような開催となりました。
2019年も継続して開催する話となっており、南相木村がどのような発展につながっていくのか共に取り組んでみたいと思います。
最後に南相木村の観光としてダム。南相木ダム。日本で一番標高が高い所にあるダムだそうです。

ダムの斜壁でモデルポーズの恥ずかしい姿を撮られてしまった出張となりました。


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