返報性の法則と互恵性(リプロイシィ)

返報性とは他人から何か恩恵を受けた後、お返しをしなければならない気持ちになることです。

デニス・リーガン博士は、返報性について次のような実験を行いました。

これは「美術鑑賞」という名目で仮装された実験である。
被験者は2人1組で実験に参加し「美術鑑賞」という名目で絵画の評価をするように指示を受けました。
しかし、実際は被験者とペアになった相手はニセ被験者(サクラ)であり、絵画の評価というのも偽の指示でした。

美術鑑賞している合間の休憩時間に、ニセ被験者は一旦部屋の外に出て飲み物を購入してきました。
購入した飲み物はニセ被験者自身だけが飲む1本のときと、被験者の分も購入した2本のときの2つの条件が用意されていました。
== 条件群 ==
a) 非援助条件 : ニセ被験者は自分の分の飲み物だけ購入してくる
b) 援助条件 : ニセ被験者は被験者の分の飲み物も購入してくる

美術鑑賞の後、被験者はニセ被験者に対する好意度を測定しました。
そして、すべての作業が終わった後、ニセ被験者は被験者に対し「宝くじを買わないか?」と持ちかけました。
そのときに被験者が何枚の宝くじを購入したかを測定しました。

== 結果 ==
a) 非援助条件
ニセ被験者に対する好意度が好ましい 1.0枚
ニセ被験者に対する好意度が好ましくない 0.8 枚
b) 援助条件
ニセ被験者に対する好意度が好ましい 1.9 枚
ニセ被験者に対する好意度が好ましくない 1.6 枚

飲料をもらった被験者は、もらわなかった被験者に比べて宝くじの購入率が2倍も高くなった。
明らかに返報性の法則(心理学的には互恵性)が働いていることが確認できる。

また、注目する点としまして、飲み物をもらったグループの中ではニセ被験者に対する好感に関係なく宝くじを購入する傾向が高いことが確認できる。
つまり、例え、悪い印象をもったとしても返報性の原則によって、気に入らない人からの宝くじ購入依頼を承諾してしまったということになる。
返報性が好き嫌いの感情を越える影響力をもつことが証明されたわけである。

返報性は対人関係の好き嫌いにも現れます。
もし、あまり意識していなかった相手から、「好きです」と言われると、その人のことが気になってきます。
そして、いつの間にか「自分も好き」と思えてくることがあります。これを「好意の返報性」といいます。
逆に、「あなたのことは嫌いなんだ」と言われると、その人のことが嫌いになります。これは「嫌悪の返報性」といいます。

仕事においては、上司が部下を認めれば、部下もその上司を認めます。
つまり、部下は自分を信頼し能力を評価してくれる上司に対して、その信頼を返そうとするのです。
上司が話を良く聞く職場では、報告・連絡・相談が多くなり、上司の意向に添うように行動します。
上司が積極的でない職場では、ことなかれの風土が生まれます。

そのほかにも、日常会話で、天気の話題など浅い話しかしないと相手も浅い話で返すものだが、あえて深い話をすると相手も深い話をします。
希望にそって丁寧にヘアースタイルを仕上げる美容師は次回も指名をもらえます。
街角で配られている試供品にも返報性に対する効果があります。


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