哲学対話における問い(テーマ)の役割

哲学対話を行う際には必ず「問い」または「テーマ」を元にして対話を進めていきます。

なぜ、哲学対話に問いが必要なのか?
予め問いを決めておいた方がいいのか?
問い出しにどんな意味があるのか?

これらの哲学対話における問い・テーマの役割について説明します。

はじめに、哲学対話に問い(テーマ)はどうして必要なのでしょうか?
哲学対話には色んな流派が存在していますが、土台は「子どものための哲学(Philosophy for Children)」のやり方になっています。
哲学という名前がついているので、物事への真理を探究する、話し合って内容を深めていく行為が哲学対話に含まれています。
探求するにあたって、考える行為が不可欠で、考えるために「問い」が必要になります。つまり、問いがあって初めて人は考えられるようになります。

どういうことかというと、例えば「お金が欲しい!」という話題で話をしていたとする。
「お金欲しいよね~!」
「ほんとそう。給料上がらないかな!?」
「宝くじにでも当たらないかな。」
というような感じで、問いがない話というのは雑談や談笑になりがちで、考えられるようにならないし、探求することにつながりません。

そこで、「お金」に関する問いを定めてみると、
「どうしてお金が欲しいのか?」
⇒かわいいお洋服を買いたいから。
⇒おいしいものを食べに行きたい。
⇒子どもの学費を貯めたいから。
「どうすればお金が貰えるのか?」
⇒お母さんのお手伝いをする。
⇒国家資格を取って、資格手当をもらう。
⇒お客様に喜んでもらえるサービスを作る。
「お金の意義はなんなのか?」
⇒モノやサービスとの交換価値がある。
⇒価値の基準を作り出している。
⇒その人に対する信用を生み出す。
という風にいろいろと考えられ、理由や背景を知れるようになります。

なので、哲学対話では探求することや考えることをするために、問いやテーマが必要になります。

では、次に問いやテーマはあらかじめ決めておいた方がいいのか?
私は決めない方が良いと思っています。
例えば、「自然保護に必要なことは何か?」のような、あらかじめ問いやテーマが決まっていると、その問いとテーマに興味関心がある人しか集まらないようになります。興味関心がある時点でその分野に関する知識や自分なりの意見をすでに持っているでしょう。そうするとその場での思考に関する片寄りが発生します。
また、あらかじめ問いやテーマが決まっていると、自由に話していいという雰囲気がなくなります。つまり、先生や主催者が期待や想定している問いやテーマになります。上記の例でいうならば、自然保護するのが当然という前提があり、反対意見となる自然保護をしなくてもいいと思っている人は、発言することにためらいが生まれ、自由に話せなくなるでしょう。
そして、あらかじめ問いやテーマが決まっていると、先生と生徒、主催者と参加者という立場の違いを暗黙に作り出すことにつながります。

なので、その日に集まった人が問いてみたいこと、話し合ってみたいテーマを出し合って決める方が良いと思います。
問い出しという行為は、話す内容を決めるということだけでなく、哲学対話の場にいる人が主体的に取り組まなくてはいけない雰囲気を作り出します。
完全に対等な関係性を明示するためにも、みんなで決めるという行為が大切なのです。

ただ、哲学対話の設計にもよるので、問い出しやテーマ決めの時間が取れない場合はあらかじめ決めた方がいいでしょう。
私は過去に話したいことを挙げていき、問いにまとめるのに3時間弱かかった場合もありました。ちゃんとした問いを作るには意外と時間がかかります。
また、学校や企業からの依頼で哲学対話をしなくてはいけない場合、金銭を頂いている関係上、先方様が望んでいる方向に寄せることも必要です。

哲学対話での問いやテーマがどのように役割をはたしているのか、ちゃんと理解した上で、実施時間や対話をする趣旨、目的によって使い分けることが必要です。


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